「私の妹二人は、ある時期を境にいなくなってしまいました」
鹿間さんという女性の方から聞いた家にまつわる話をする。
その女性が、まだ幼い頃に自分には妹が二人いたと話す。
名前は不思議に覚えてはいないのでここでは仮に、花と夢とする。
顔が三人ともそっくりで見た目からは誰が誰かわからないほどだった。
ある日、父親と母親に和室に呼び出される。
「あなたたちは気づいていると思うけど体を共有している」
つまりは、体を共有しているから一人が怪我をすると他の二人も同じ場所を怪我してしまう。
そういった体なんだと話しつつ、ある儀式をするという。
夜半、部屋の中で父母が何かまじないめいたことを一心不乱に唱えながらそれを黙って聞いているが、
鹿間さん以外の妹が苦しみ出す。
胸をおさえて、悶絶する。
慌てているとやがていつの間にか儀式は終わる。
ふと見ると部屋の中には自分しかいなくなっており、それぞれの座布団の上には乾いたへその緒がひとつずつある。
それからのことはよく覚えていないというが、
叔母の元にあずけられ育ったが、
大人になり聞いた話によればおまえの父親と母親は子供が長らく生まれなかったが、
やっと私を授かり、子を得たものの体が弱く死んだのだという。
私は二度目の子供なのだというが、出生のことはよくわからない。
只、おまえには姉妹などいない。
そう叔母からは聞かされ、へその緒と口にした瞬間、叔母の顔が険しくなり、
「そんなおぞましいことは言わんでくれ」と言われてしまう。
あの座布団の上のへその緒はまるでへその緒が人間に変わったかのような、そんな疑念を孕みつつ今も鹿間さんの中にあるのだというが、
蟲毒という中国の呪いの方法がある。それに近い何かを感じたのは否めない。