願いと呪いは似ている。
「死んでほしい」という願いと、
「生きてほしい」という願いは、
方向性こそ違うが同じくらいの強さを持った願いであり、一方は呪いだ。
そんな話を聞いた。
琴音さんという女性には、二歳下の妹がいた。
ずっと昔から仲がよくてね、どこへ行っても二人だった。
「妹には幸せになってほしい」
「姉には幸せになってほしい」
そんなことを互いに思うくらい二人は仲良しだ。
ただ、妹の方は重病にかかってしまった。
「持って半年」
なんて医者から言われたという。
姉である琴音さんは、ひどく哀しんだが、
お参りなどをして、ずっと神様にお願いしていたという。
気休めでも何かをしないではいられなかった。
手の施しようがなく医者でさえどうすることもできない。
無情な運命が突きつけられる。
妹に会った、最後に病院のベッドで
妹さんが、姉の手をつねり、琴音さんにしか聞こえない掠れた声で
「お、おまえ、何を願ったんだ…」
琴音さんは、せめて治らないなら早く苦しみから解放させて、楽に死なせてあげてください。
と、祈ったことを伝えると、
「ヒトゴロシ」
と妹は言ったまま黙ってしまった。
琴音さんは、笑いながら
何事もなかったように、
「寝ちゃったね」
と言って、ごまかした。
「でも妹は幸せだったと思います。最後は家族の者に看取られて」
でも、と琴音さんは言う。
「本当は私妹のことそんなに好きじゃなかったかもしれない心のどこかで死んでほしいと願っていたかも」
と、少し冗談めかして笑っていた。
やはり願いと呪いは似ている。