エレベーター 投稿者:はらぐり

高校3年の秋。

大学への進学が決まり、卒業までの残りをどうするかを考え、アルバイトを始めた。学校終わりに職場へとすぐ向かい、夕方から夜の21時ぐらいまでの勤務。
アルバイトも慣れたころ、残業も度々頼まれることもあった。
ある日、残業で帰りが遅くなり実家のマンションへ急いで自転車を漕いだ。
帰り道の途中、団地沿いを通れば近道だが夜は電柱が少なく暗い。
いつもはそうであったが今回は違った。

1台の軽自動車と救急車、そしてパトカーが路駐に停り、人だかりもできていた。
軽自動車の運転席に青いTシャツを着た女性がぐったりしているのが見えた。
自分は何が起こっているのか一瞬で理解できた。

『練炭自殺だ』

自殺による死体は初めてで、あまりじろじろ見るようなものじゃないと、軽く手を合わせ、その場を去った。
自転車を停めるためマンションの駐輪場まで着きエレベーターのロビーまで早歩きで向かった。
外からロビー内のエレベーターは丸見えで1人の女性がエレベーター内に入って行くのが見え、自分は急いでロビーのドアを開けた。

『あっ、待ってください』
と、開ボタンを押して閉まるギリギリで自分も乗った。

『すみません、すみません』と女性に声をかけようとした。
しかし、エレベーター内には誰もいなかった。
おかしい。
確かにさっき女性がエレベーター内に入るのを見たのに。背筋がゾッとした。

それだけではない。エレベーターのボタンが押されていたのだ。
自分は押していないのに4の階のボタンが点滅している。
それは自分が住んでいる階数だった・・・

その後は何事もなかったが、記憶を辿るとエレベーターに入った女性は青い服を着ていた。
自分は霊感があるわけでは無いが、影や予知夢といったものが度々見ることがあるので、もしかしたら自殺した女性を引き連れてきてしまったのかもしれない。

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