これは私が大学生の時、実際に体験したお話です。
大学に入学したばかりの私は、広い大学に慣れるためよく構内を散歩していました。そんなある日、いつもと同じように散歩をしていると奇妙な人物が木陰からこちらを見ていることに気がつきます。
その人物は男性で、なんと全裸なのです。
しかし男性はとても無機質な目をしており、生気を感じられませんでした。それを見た私は「あ、この人生きてる人じゃないかも」すぐにそう思いました。なぜなら、まわりの学生は誰も男性の存在に気づかないのです。
そんな男性の様子を見つめているとやがて手招きをしてきました。
男性は手招きをすぐにやめると構内の奥へと消えていきます。
好奇心から私は男性についていくことにしました。
男性の背中を追っていくと、やがて人気のない「大きな壁」のある場所に辿り着きます。気がつくと男性の姿はすっかり見失ってしまっていました。
ただ、直感で「あの人はこの壁の先にいる」そう思いました。
ここからはよく覚えておらず、どうやったのかも分からないのですが私は何故かその「大きな壁」を乗り越えることができたのです。
壁の先にあったもの・・・
それは「白骨遺体」でした。
遺体は衣服を身につけておらず、近くには古いビジネスカバンが1つだけありました。
そこで私はようやく恐怖を感じました。
助けを呼ばなくちゃ。そう思った私は携帯で警察に通報。ここからすぐに離れたいと思いましたが、あの大きな壁を再び乗り越えることはできなくなっていたのです。
しばらく白骨遺体とともにその不気味な場所で待っていると警察官が駆けつけ、脚立を使って壁の先から助け出してくれました。駆けつけてくれた警察官からもどうやってこの場所に入ったのか?と聞かれましたが、「分からない」としか答えられませんでした。
後日、あの白骨遺体は捜索願の出されている行方不明者であることが判明しました。しかし、なぜ衣服を着ていなかったのか?なぜあの場所で亡くなり、白骨化するまで誰にも気づかれなかった?それは今でも分かりません。
あの日、私に手招きをしていた男性は自分の体を見つけてほしくて、私に手招きをしてきたのかもしれません。今はそう思うことにしています。