これは、私がまだ小学校の高学年だったときの話です。
当時、私が住んでいた区では、全国的には有名ではありませんが、地元では話題になった殺人事件が発生しました。
仕事帰りの女性が、新築の家が建つ予定だった工事現場で殺されたという事件でした。
私の当時住んでいた家から事件現場は、電車で数駅程度でした。
そこで、事件現場で肝試しをしよう、という話に、クラスでなったんです。
私は怖がりなので、内心嫌だなと思いましたが、正直、楽しそうだなという気持ちもあったので、反対しませんでした。
すると、Yくんという嫌われ者の男子が、自分もどうしても行きたいと言い出し、みんな嫌がりました。
それでも、そんなに行きたいなら仕方ないということで、Yくんも肝試しのメンバーに加わることになりました。
肝試しの日は、口裏を合わせて、クラスのリーダー格の子の家にみんなで泊まるということにしました。
参加者は約十人ほど。みんなでワクワクしながら事件現場に行きましたが、いざ行ってみると、ただの工事現場跡になっていて、何も楽しいことはありません。
時間も中途半端に遅いですし、なんだか気まずい空気になってしまって、どうしようかと困っていたとき。
例のYくんが、突然、「あそこに誰かが見える!!」と言い出したんです。
空気も空気だし、なにせ言い出したのが嫌われ者のYくんですから、一同、すっかりYくんに呆れ果てました。
「そういうのやめろよ」
ヤンチャな男子たちが、Yくんを軽く殴ったり蹴ったりしました。すると、Yくんは大げさに倒れ込み、起きてきません。
Yくんを放っておいて、ほかのメンバーは公園などで適当に時間をつぶしました。
次の日、眠い目をこすりながら学校へ登校すると、Yくんが明らかに大怪我をしていました。
何があったのか、生徒や教員が聞いたようですが、Yくんは、頑なに口を開かなかったそうです。
思うに、Yくんには本当に誰かが見えていたのではないでしょうか。それが人間なのか、霊的なものなのかはわかりませんが……。
その誰かが、Yくんを痛い目にあわせた。私は、そう思わずにはいられないんです。
Yくんはいきなりおとなしくなり、じきに、お父さんの仕事の転勤ということで、転校してしまいました。
例の事件は、二十年以上経過した今も未解決のままです。