裁ちばさみの女 投稿者:しぐろ

これは私が7歳のときに起きた不思議な出来事です。

一緒に住んでいる家族は両親と祖母と私の4人だけ。祖母は昔から霊感が強いと自称するほどよく幽霊や怪奇現象を見ることが多い人でした。

夏休みも迫るある蒸し暑い夜、いつものように祖母は自室で、両親と私は夏の間だけ、涼しい床の間で布団を敷いて寝ていました。
祖母はその日の夜に女のひとに圧しかかられ襲われるという夢をみたそうです。

その手には大きな裁ちばさみが。

強い力で祖母の首もとに開いた状態のはさみの刃を押し付けてくる女と、切られまいと懸命に抵抗していた祖母。何分格闘していたのか、曖昧な時間が経った頃、なんとかはさみを持つ女の手を首もとからずらし頭上へ押し上げたことによって枕へとその刃が突き刺さりました。
それと同時に祖母は夢から覚め、今起きていたことがただただ恐ろしい悪夢であったことを自覚しそして安堵したそうです。

朝になり、母が一番最初に起床して、次にまだ眠っている私を起こそうと私の方へと目を向けると、そこには不自然なほどに散らばった髪の毛が。

抜けているにしては量が多く不自然で、不思議に思った母は私の頭をよく確認すると、頭頂部から少し右下のあたりから髪がひと房、はさみで切られたようにすっぱりと短くなっていることに気付きました。

寝惚けて自分で切ったのか、でもそんな記憶はないし、はさみを持ち出して片付けた様子もなく、何とも言えない空気のまま不格好になった髪の一部はヘアピンで押さえて過ごすことに。

家族で朝食を摂っていると、祖母はみた夢の話をぽつぽつと語ってくれました。

話を聞いているうちに、もしかして私の髪が突然切られたような状態になったのは、祖母の夢に出てきた裁ちばさみを持った女が原因なのではないか、という結論になりました。

突拍子もないただの夢の話ですが、あまりにリンクし過ぎていて不気味な出来事だったため、家族の誰にも笑い話になりませんでした。

なぜ祖母の夢で襲われた祖母自身ではなく、私のほうに影響が出たのかは未だにわかっていません。

ただ夢の中で祖母がそのまま抵抗できず襲われていたのなら、起きたときにどうなっていたのか、大人になった今でもたまに想像してしまいます。

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