飼い猫が死んだ。
死んだら神様になるものだと幼い頃の後藤田さんは思っていた。
だから、近所に住む矢田さんというおばあさんが腰や足が悪いというのを聞いて、
ならばと考えて子供ながらに
猫の遺体と一緒に、生きた昆虫や、ヤモリなんかをつかまえてきて、
丁度矢田さんの家の真向かいにある空き地の隅に穴を掘り埋めた。
図書館で読んだ「即身仏」からヒントを得たという。
これで、矢田さんは元気になる。
そう思った。
だが、その翌週、
矢田さんの葬式が行われた。
母親が言っていたことには、なんでも夜中寝ていると、いろんな声がして眠れない。
お袋は死ぬ前にそう言っていたと矢田さんの息子さんが葬儀の席で話しているのをちらりと聞いた。
話は、以上だが、
後になって母親などに改めて詳しいことを聞いてみたりした部分を捕捉してある。
「子供って平気で残酷なことするよな」
一流企業に勤める身としては、消したい過去のひとつだという。