プログラマーからインフラエンジニアに職種を変えたばかりの頃、1年くらい医者が利用するパソコンのセットアップをしていました。
日中帯は患者がいたり診察室に入れないので作業は深夜がメインでした。
病院によってパソコンを設置する場所は様々で診察室だったり手術室なんですが、大きな組織となると地下にITの部署を構えてることも。
日本全国の病院で作業があり、急遽長野県まで一人で出張することになりました。
当日は大雨でタクシーに乗って病院まで行きました。
担当者に挨拶して名刺交換をし時間まで待機することになり、休憩してたんですけどどうにも匂いは慣れないしひんやりとしてて居心地も悪く早く終わらせたいなと思ってました。
担当者から作業開始許可が出たので作業場所へ案内してもらいました。
場所は地下で霊安室の隣でした。
内心、嫌だなぁ…と思いながらパソコンをダンボールから出してパソコンを指定のあった場所へ設置、電源やLANケーブルを繋いですぐ使えるようにしました。
人の死が日常的に起こる空間のため、奇妙な体験をしたという話もよく聞いていましたがどうせ作り話とか盛ってる程度に思ってました。
作業場所は地下でもちろん窓なんてなく空気も悪い。
ですが、カーテンが揺れてることに気づきました。
エアコンかな?と思いましたが深夜ということもありエアコンは動いていませんでした。
風の流れと自分を納得させ作業に集中してました。
途中、「あー疲れた!」とか「仕事終わったら何か食べて帰ろう!」とか独り言よりかは多少大きな声を出してました。
客先とか仕事中とか非常識だと思うかもしれません。
けど見えちゃったんです。
入口に白い服を来た人がいるんです。
もちろん担当者ではありません。
ずっと視線を感じながら、どこか行かないかな、こっち来ないといいなと思ってました。
すると作業場の内線が鳴り響きました。
担当者かな?用はないけど呼び出そうと思って受話器に耳をあてると…
「いつ帰るの?」
すぐに受話器を戻しました。
受話器から聞こえたような真後ろから聞こえたような。
今振り向いたらダメということは本能的にわかりました。
交換した名刺を取り出し担当者が待機している部署に携帯電話からかけました。
何も知らない担当者から「どうしました?」と聞かれたので「不明点があるのですぐ来てください」と伝えました。
数分して担当者が到着し、冗談ぽく「失礼を承知でお聞きしますが…」とあったことを聞くと、納得したような顔をして今までも同じようなことがあったと話してくれました。
状況を理解してくれ同じ部屋で待機してくれることになりました。
その後は何事もなく作業は終わりました。
最終的にその仕事は辞めました。
業界は変わっていませんが今は他の仕事をしています。