知人の、仮にNから聞いた、とある小学校の風習です。
その小学校には、“裕福な生徒が貧乏な生徒のことをいじめたら、裕福な生徒は将来的にも大成功する”という風習があったそうです。過去形なのは、今はないからです。
Nから、その小学校出身の有名人に誰がいるかを聞いたのですが、何人か、とんでもない大人物もいて、驚かされました。
ということは、その大人物は小学校時代はいじめっ子だったというわけ……いや、あまり邪推するのはいけませんね。
その小学校は高級住宅街にあるのですが、それでも、当然、貧富の差というものは存在します。
ただでさえ、貧乏だといじめの対象になりやすいですよね。そんな風習があったせいで、貧乏な家庭の生徒は、“いじめられて当たり前の存在”として扱われていたそうです。
先生をはじめとした大人たちも、その風習の内容を信じていて、いじめを見て見ぬ振りするどころか、積極的にいじめに加わっていたとか……最低な話ですよね。
そんなひどい風習がなくなったきっかけの出来事は、Nの代に起きました。
Nと同じ学校に、地元の名士と言っても過言ではないほど、先祖代々裕福な家庭の男子生徒がいて、仮にKとします。
Kもまた、ものすごくいじめっ子でした。Kのせいで不登校になった生徒が、何人もいたんだとか。
高学年で、NはKと同じクラスになり、担任が、道徳の授業か何かで、差別されて育ったけれど、将来的には大成功したという偉人の話をしたときのことです。
「僕もそんな有名人になってみせます!!」
「あなたなら、きっとなれるわ」
Kは担任に気に入られていたそうなので、そんなことを言って、絶賛されたんだとか。まさに茶番ですよね。
そして、Kは本当に、有名人になりました。おまけに、中学生という若いうちに、です。
……Kは、犯罪者になってしまったんです。事件が特定されるといけないので、ニュースになるほどのことをしてしまった、とだけ言っておきます。
Kの事件以来、いじめっ子がもてはやされるような風習があるのはおかしい、という流れにようやくなったそうです。Nいわく、今では、いじめがなくて平和だと、地域でも評判の小学校なんだとか。
でも、今はその小学校にいじめがないだなんて、信じられますか? 風習も人の悪意も、そんなに簡単になくなるものではありませんよね……。