「自炊」という行為をご存知だろうか。
本や漫画を裁断してスキャンし、データに変換してクラウド上で管理することだ。
これだと本が日に焼けてしまう事も、引っ越しの際に思いダンボールを運んでもらう事もなくなる。
元々電子書籍は懐疑派だったのだが、ボクの家の漫画専用の本棚にも限度がある。
この自炊という保管方法を耳にし私は早速自炊専用のスキャナを購入し自炊に取り掛かった。
本の背表紙を裁断しスキャン。さすが専用のスキャナだけあり普通のコピー機とは比べ物にならない速度で本が取り込まれていく。1冊5分もあれば完了。どこでも読むことが出来る。
意気揚々とスキャンを重ねていきある本をスキャンしている際、スキャナが強制終了した。
連続使用していると時たまそうなってしまうので気にせず再起動したが、またすぐに起動を表す青いボタンが消滅し、作業が中断してしまった。
3度目の強制終了の時に気付いた。シャットダウンされる前、最後に取り込まれたページがなぜか真っ黒に表示されている。
もしやと思い件のページを取り除いたら無事にスキャンが完了したのだがその後スキャナはうんともすんとも言わなくなってしまった。
今取り込んだ本は漫画ではなく、百物語をテーマにした人気シリーズの文庫本の最終巻だった。
後日スキャナをメーカーに修理に出したのだが「問題なし」としてそのまま戻ってきた。
その後は無事に起動でき大小さまざまな本を自炊したがこのような不具合を起こしたのは後にも先にもこの本だけだった。
件の真っ黒になったページは、お化け屋敷の搬入の際なぜか人形が一体だけ毎回余るという話。特にその本のメインの話という訳でもなくどちらかと言えば繋ぎのような話だった。
私のパソコンには今、1話欠けた状態の百物語の本が保存されている。