「ののちゃん、よくこんな部屋に住めるね」
引っ越し早々、隣の奥さんに言われた台詞なのだがこれが全てを変えた。
私は九州地方の田舎町から上京進学をした。見慣れない土地に目を見張るばかりの都会の景色。私にとって見るもの全てが新鮮で刺激的だった。
親元を離れて一人暮らしを始めるのだが、都内の物件は高い。最低でも10万円する。
いくら親の支援があっても毎月高額な家賃ではいつかは潰れてしまう。
そんな時に不動産屋の担当者がこう切り出した。
「掘出しの物件があるんです」
聞くと都内のあるマンションの一室。18畳のリビングに10畳の洋室。お手洗いと浴室は別で、しかも駅から徒歩5分。こんな好条件物件が4万円。
怪しさは満点だが、担当者からは「床が傾いてるんです」と言われて納得して借りた。
その翌日があの冒頭の台詞に繋がる。
奥さん曰く、10畳の洋室で女性が首を吊って自殺しているのだという。
私は不動産屋に駆け込んだ。
「どうされたんですか?」
あの時の担当者が出てきたので説明すると
「説明されましたが?」
と驚きの返答。私はそこまで記憶力に低下はみられない。
「聞いてません!」
そう言うと間取り図を出してきた。そこの部屋の説明欄を指さして
「ここにございますよ」
小さい文字で『告知事項あり』と書いてあった。
こうして私は半ば詐欺に遭って通称『事故物件』に住むことになったのだがこの日を境に妙な事が起きるようになった。
勝手にシャワーが出ている。誰もいない筈の玄関に人影。あげたらキリがない。
そんなある時に
(心霊写真って撮れるのかな)
と思い、デジカメを用意した。中にはデータなんて入っていない筈なのに何故か一枚だけ写真が入っていた。
顔が歪んだ女性の顔のアップの写真だった。しかもエアコンなど見えることから私の家の中で撮っている。撮影日は入居の日だった。
後にこの女性が自殺した前の入居者と知るのはまた後の話。
私はまだこの部屋に住み続けている。
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ご本人より、お話に出てきた実際のお写真を頂戴しております。
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