旅館 投稿者:てぽたま

私の母と祖母が、旅行に行った時のお話です。

とある旅館に入りのんびり過ごしたあと、いざお風呂に入ろうとした時になんだか寒気がしたという母。
背後に誰かがみているような感覚。髪を洗うのもままならないまま風呂場から出て行ったそうです。

「なんだか嫌な予感がしたんだよね。すぐに上がってきちゃった。」と笑いながら話す母。

夜にはあの感覚も消え去っていて、きっと勘違いだったのだろうと思い、2人で食事を済ませ布団に入り一夜が過ぎました。

旅館から出て、新幹線に揺られる中、祖母は母に向かって重たい口を開けました。
「えみちゃん、きっと怖がるだろうから言うのを黙ってたんだけどね。あの部屋、だめだったみたい。あの夜、実は枕元で女の人と子どもが濡れたままじっと立ってたんだよ。きっとお風呂場のも、同じ人達だったんだろうね」

それからその旅館には今後行くのをやめたそうです。

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恐怖の図書館 投稿者:せぃな

高校生の時の話です。
夏休みを利用して地元に帰省した私は本が読みたくて図書館へ行きました。

本を探してると4、50代くらいでしょうか
一人のおじさんがすれ違ったと思ったら、直ぐ引き返してきて「こんにちは」と声をかけてきました。
『え?何?』と思いましたが「こんにちは」と返しました。

それからそのおじさんは私のそばを離れません。
本を探したいのに気づけば近くにいるので、だんだんと嫌な気持ちになってきました。

数分後おじさんが窓側の椅子に移動したのを確認して私は2階へ。
その際に失敗してしまいました。
階段を登る際、そのおじさんと目が合ってしまったのです。

2階は節電しているのか薄暗く、たった一人サラリーマンの格好をした男性がいるだけでした。
一安心して2階で本を探そうとしたのも束の間、さっきのおじさんまで2階へあがって来たのです。
私の近くまで来たおじさんは「やぁ、また会ったね」と・・・。

「さっき目が合ったから追いかけてきたでしょ!」と言いたかったですが、もう恐怖で言葉がでませんでした。
私に出来たことはサラリーマンの男性のそばから離れないことです。
おじさんが離れた隙をみてダッシュで階段を駆け下り、結局なにも借りずに帰ってきてしまいました。
今思えば図書館の人に言えば良かったです。
当時の私は恐怖心でパニックになってたと思います・・・。

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実家の寝室 投稿者:小豆

投稿失礼いたします。
これは数年前、私がまだ実家にいたころの話です。

私の実家は狭く、2LDKの一軒家で4人で暮らしていました。
ある日私は体調が悪く、仕事から帰るとすぐに寝室に向かいました。
寝室には布団が3枚敷いてあり、真ん中の布団に横になりました。
毛布を頭まで被り横になってしばらくすると押し入れからガサゴソと物音がしました。
はじめは「妹がお風呂の準備してるのかな」と思いましたが妹はついさっきお風呂に入ったばかりだと思い出しました。
リビングからは母と父の声がします。
じゃあ誰?

と思った瞬間、押し入れからの物音がやみました。
ほっとした瞬間、今度は隣の布団からザッザッザッと大きな足音がしてきました。
普通の足音ではなく、着物を着てすり足で歩いているような足音。しかもとても速いんです。
ずっと布団の上をぐるぐると歩いていました。
怖くて息を潜めているとその足音がいきなりピタッと、私の枕元で止まりました。
頭まで毛布を被っているのでその姿は確認できなかったのですが頭の中に髪の長い女の人が思い切り腰を曲げて私の顔付近に顔を近付けている気配がしました。頭の中にその映像が鮮明に流れ込んできました。
毛布を取って確認したかったのですが頭の中で「いま毛布を剥いだらやばい」と警告がなり気配がなくなるまでじっと耐えてました。
しばらくすると気配が消えたので私は急いで起き上がりリビングへ向かいました。
母と父に確認しましたが誰も寝室には行っていないと言っていて、妹もまだお風呂に入っていました。

もしあのとき毛布を取ったらどうなっていたのか。思い出すだけで怖いです。

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死者に会えるエレベーター 投稿者:Mari

私が小さいころに住んでいたとある地域には、Nという有名な心霊スポットのビルがあります。

 心霊スポットといっても、廃墟ではありません。何十階とあって、いわゆる高層ビルなのですが、入居者が全然いないんです。
 おそらく、常に全体の半分は空き部屋なのではないでしょうか。
 それなのに、取り壊されないのが謎でした。
 取り壊そうとすると、工事の人や、取り壊しを命じた人に不幸が訪れる、なんていう定番の噂もありましたが……。

 なにせ、噂ではなく、Nでは強盗や自殺、最悪なものでは、殺人事件という、とんでもないことが発生していたんです。
 私はNに、父親が仕事の関係で部屋を借りていたので、何度か足を運んだのですが、なんだか異様な空気というか、いるだけで気持ちが悪くなる、不気味なビル、という印象でした。
 もうNには行きたくないと、毎回思ったことを覚えています。

 そんなNには、こんな噂もありました。人の生き死にに関わる出来事が多いせいからでしょうか。深夜三時に、エレベーターのボタンをでたらめに押すと、自動的に止まり、ドアが開くと、亡くなった中で一番会いたい人がいる、というものです。
 明らかに子どもだましの噂ですが、それに飛び付いた人がいました。父の友人のSさんです。
 Sさんは、幼い娘さんを事故で喪ってしまい、もう、どんな形でもいいから、娘さんと再会したいと強く願っていたのだとか。

 父から聞いた話によると、Sさんは、迷わず深夜の三時にNのエレベーターに乗り、ボタンをでたらめに押したそうです。
 するとなんと、ぐちゃぐちゃの見た目で、誰だかはわからないけれど、かろうじて女の子だとわかる幽霊が出てきたとか。
 娘さんかと思い、狂喜したSさんですが、その幽霊の言葉で、心底がっかりすることとなりました。
「会いたかったよ、ママ!」
 Sさんは、見た目が中性的だからよく誤解されますが、男性です。幽霊とはいえ、娘さんが性別を間違えるわけがありません。
 Sさんが悔しさのあまり涙をこぼすと、自動的にまたエレベーターが動き出し、気が付けばNの外に出ていたんだとか。

 あくまでも父から又聞きで聞いた話なので、盛っているところはあるかもしれません。けれど、小さい私にとっては、とても怖い話でした。
 Nは、いまだに取り壊されずにその場所にあります。

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温泉旅行 投稿者:E.O

Aさん含む仲良し4人グループは卒業旅行と称して温泉に来ていた。
温泉旅行と言っても高校卒業したばかりのAさん達は金銭的な問題も考え格安の旅館に泊まることになった。

「格安過ぎて心配だったけど綺麗な所で良かったね!」

そんな会話をして夕食まで温泉に入ったり、他愛もない会話をして過ごしていた。
夕飯の料理が運ばれた時何故か4人前より多い料理が出された。その時は、サービスいいなぁ等と考えていた。

夕飯を食べ終え、寝る前にもう一度温泉に入ろうということになり部屋を出たところで女将さんが「満喫してくださいましたか?今日はもうお休みになってください」そう一言だけ残し居なくなった。

温泉に入りたかったが、もう0時も近いため時間なのだろうと布団に入る事になり気が付いたら眠ってしまっていた。
朝目が覚めると昨日とは全く違うボロい旅館にいた。
私達はどうしてこんなところにいるのだろうと思い先払いしている為、お礼の一言も言わず急いで帰ることになった。

後から聞いた話、私達が泊まった旅館は数年前に近隣に出来たホテルに客を取られ今は営業していなかったらしい。
私達が泊まった旅館は何だったのだろう。もしかしたら久々の客でちゃんともてなしてくれていたのだろうか。お礼を伝えてくればと今では後悔している。

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煙草 投稿者:ナナシノナナシ

深夜に道を歩いていると煙草の自動販売機を見つけた。

少し前のタイプのようでタスポの読み取り装置がない。
置いてある煙草のラインナップを見て若い頃に愛飲していた物があった。
ポケットを漁り小銭を探す。
丁度あった。
自動販売機に小銭を飲ませる。カタン
そんな音を確認すると自動販売機の口に手を伸ばす。

そんなときふと昔に聞いた怪談を思い出す。
購入した物を取り出そうとしたら中から手が伸びてきて引きずり込んでくる。
確かそんな話。

伸ばした手が少し、強ばる。
しかし直ぐにバカらしくなりさっさと煙草を取り出した。手は出てこなかった。

深夜の風に吹かれながら昔の思い出を口に運びながら家路についた。

翌日、妻にこの話をした。
するとあの通りに自動販売機は確かにあるが、もう電源が通ってないはずだと言われた。

そんな馬鹿なと思い、昨日の服のポケットを確認する。
そこに煙草は無かった。

まるで煙のように消えてしまった煙草に、対してまだ一本しか吸ってないのになどとすっとんきょうな事を思いつつ私は仕事に向かった。

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揚げられた物 投稿者:GSY-UcD

熱される油がパチパチとなる。
そこから、シュワシュワと泡がたつ。
『ふん、ふぅ~ん。』
鼻唄を奏でながら、料理をしている少女が居た。
『ほいっとぉ。』
熱い鍋から、何かを取り出す。
それを油切り用の網の上に乗せた。
『わぁ~良く出来たぁ~ふふ、柚佳の唐揚げ!!』

彼女の名前は、千田 柚佳(ちだ ゆずか)。
今は、ちょうど夕暮れ時なので晩御飯の晩御飯の支度をしていた。

『お兄ちゃん~唐揚げ大好きだからなぁ。 』
実は、彼女には大学に通う兄がいる。
最近久しぶりに電話で、話した際に何かあったらしく気分が落ち込んでいた。

そこで、兄を励ますために単身で来たのだが…タイミング悪く兄は三日程家を開けるとの事で兄には秘密で兄の家に住んでいた。

『まぁ~いまじゃ、お隣さんとも仲良くなっちゃったしね?』
そして、今日の夜に兄が帰ってくるので疲れた兄を大好きな唐揚げで喜んでもらおうと計画していた。
『長かったなぁ…3日間は。まぁ、今日の為への準備に使えたからヨシとします。』
彼女は、カチューシャにて紙を上げてはいたが唐揚げを揚げていたので額は汗だくになっていた。
『あぁ~熱い熱い、桃水飲もう。』
水分補給のために、置いておいた桃水を小さな口でゴクゴクと飲んだ。
『ぷふぅ…なんか、早く帰って来ないかな?』
もう、唐揚げは揚げ終わり油切りが終わればもう一工夫の段取りに入れるのだが…また時間を開けたい。
『じゃあ…お風呂掃除しとこ~。』
柚佳は、お風呂の掃除を丹念して凄く綺麗になったのを見て自分で目を輝かせていた。
お風呂を指で触るとキュッキュッと鳴る。
『わぁ~いいっ!これで、更に喜んで貰えるよ~。』
少し気分をウキウキさせながら、台所に戻ろうとすると妄想を暴走し始めた。
『お兄ちゃん~ご飯にする~お風呂にする~それとも……きゃあっ!何てお兄ちゃんに言えるわけ無いじゃない!』
と恥ずかしさで、顔を隠すとドアの鍵がガチャリと開いてドアが開かれて…。

「え?柚佳?」
兄が帰って来たのだった。
『え……えと?お兄ちゃん?晩御飯にする?お風呂にする?それとも……。』
「荷物置いてくるわ。」
何事も無かったかのように、兄はスタスタと奥に行った。
『…わ、わかった。』
柚佳は、台所に戻り揚げていた唐揚げをザクザクと切り分けて生野菜と一緒にお皿に盛り特製タレをかけたもの。
もうひとつは、一口サイズに切り分けて揚げていたものを盛ったもの。

『一応~マヨネーズは、別皿に。』
そして、荷物を置いてきた兄が台所に来て椅子に座った。
「はぁ~疲れたよ。おっ!?今日は唐揚げと…油淋鶏かぁ!凄いなぁ柚佳か!」
『えへへ、お兄ちゃん唐揚げ好きでしょ?だから頑張っちゃった?』
兄が瞳をキラキラとさせていた。
『あぁ~我慢ならん。柚佳先に食べるぞ!いただきます!』
柚佳は、冷えたお茶を注いでいたが兄の姿を見て笑顔で言った。
「どうぞ、召し上がれ。」
バクバクモシャモシャと、美味しそうに唐揚げを食べる兄。
『(ふふ、よっぽど好きなんだね。)』
そんな兄が一旦箸を止めた。
「あれ?柚佳は、食べないのか?」
彼女は、自分のお腹を擦りながら言った。
『おやつに、金平糖食べ過ぎちゃって夕飯食べたら太っちゃうから明日食べるよ?』
柚佳は、ニコって言った。
「へぇー気にしてんだ、そう言うこと。」
兄は、止めていた箸を再び動かして唐揚げを口に運ぶ。
『気にするよ!お兄ちゃんには、女の子の事がわからないんだよ?』
笑顔では、あったが少しピリピリしているようで…冷えたお茶を少し強めに圧をかけて置いた。

『はい…お茶。』
だが、兄は唐揚げに夢中だ。
「をっ!ふぁんくふっ!」
『(口に食べ物が、入っているのに…言わなくてもいいのに。)』
そんな、兄を見て先程から比べると機嫌が良くなっていた。
『桃子も、柚佳も美味しい唐揚げ作ってくれるから…幸せだよ。』
『桃子…って、お兄ちゃんの彼女さん?』
少し表情に焦りをだし始めた柚佳。

「いや、彼女…じゃあ無いんだけどさぁ。」
「前、課題が終わらないって泣いていたのを俺がさ教えて手伝ったら…御礼に可愛い少女アニメのハンカチに包んで唐揚げの入ったお弁当を作って持って来てくれてさ。」

「それが、凄くてさ!ニンニクが効いていて中々良かったんだけど…同じサークルの友達にニンニク臭いって言われちゃってさアハハハ。」

「それから、リベンジって名目で唐揚げ弁当を作ってきてくれるんだよね?」
兄は、柚佳が作った唐揚げを食べながら桃子の話をした。
『で、お兄ちゃん的には桃子さんはどうなの?』
「どうって…、まぁ前よりは唐揚げ上手くなったかなって思うよ。」
『……そう。』
「だけど、俺さぁ。将来、一緒になる人の条件としてあげるとしたら唐揚げを作ってくれる人かな?」
兄は、食べ終わりお茶を飲む。
「ぷはぁ~美味しかった。御馳走様でした、柚佳。ありがとう!」
『お兄ちゃんが、喜んでくれたなら柚佳嬉しいよ!』
「じゃあ、お風呂汲んで入ろうかな?」
『お風呂は、洗ってあるから汲むだけだよ!』
「おっ!?サンキューっ!」
兄は、足早に浴室に向かった。
柚佳は兄が食べた、皿を流しに入れて水で冷やし始めた。

『せめて、流しには入れて欲しかったな。』
そして、暫くして…ゆっくりと湯に入った兄が出て来て冷蔵庫よりピッチャーに入ったお茶をコップに注いで飲んだ。

「風呂上がりにキンキンな、お茶飲むの良いね!最高だよ!」
柚佳は、洗い物を終えて洗濯物を畳んでいた。
『そう?なら、良かった。』
柚佳にしては、少し反応が冷めていた。
「どうした、柚佳?」
兄は、急に先程とは変わり柚佳を心配し始めた。
『思ったより、元気そうで良かったよ。』
パンツを三角織りにして、纏めながら言って来た。

『いや、電話越しで元気無さそうだったから…あんなに明るいお兄ちゃんが暗かったからさ。』
「……心配させて、悪かったな。実はさ、大学の友達がさ…音信不通になっていてさ。アイツが住んでいたアパートに行ったら荷物置いて居なくなったって言われてさ。」
「すげーいい奴でさ、叶うことなら馬鹿みたいな話とかをしたいよ。」
少し兄は、泣いていた。

「グスっ…悪いな、柚佳に恥ずかしいところ見せちまったな?」
『大丈夫…笑わないから私。』
柚佳は、チョキチョキと布を切りながら黙々と兄の話を聞いていた。

「実はさ、さっきさ唐揚げを作ってくれてる桃子の話をしただろ?俺が、落ち込んでいる時にさぁ…それが支えになったんだ。」
柚佳は、切り分けた布を針で縫い始めた。

『へぇ~そうなんだ。』
「さっきさ、俺が一緒になりたいのは唐揚げを作ってくれる人って言っただろ?だからかな?桃子と、また会いたいんだよね。」

柚佳は、ただ黙り布をチクチクと縫い合わせる。
「3日前に、実はさ桃子と出掛ける予定でだったんだが…連絡つかなくなってさ。」
「今度は、桃子が…俺の前から消えてしまったって絶望していたんだよ。」
「そして家のドアを開けたら…柚佳、お前が居たことで救われたよ。」
『そう?』
「唐揚げも、美味しかったし本当にありがとう。料理が、出来なかったのに上手になったよ…柚佳の料理に心も胃袋も掴まれるよ!」
布を縫い終わり、端の糸を糸切り鋏で切る。
『ふふ、ありがとう…お兄ちゃん。』
その布をピラっと広げる。
「あれ?」
その布の一部に、見たことあるイラストがあった布の一部が桃子のお弁当を包んでいた少女アニメのものに。

「柚佳それ、どうしたんだ?」
『あっこれ?いや要らない布を縫い合わせて袋にしようかな?って思ってさ。袋ってあると便利じゃない?』
柚佳は、穢れない笑顔で答えた。
「誤魔化すな!…どうしたんだ?それ?」
『弁当を包むのに、使われてたよ。』
「……誰の弁当のだ?」
兄は、少し静かめに言った。
「答えてくれ…柚佳。」
それを聞いて、柚佳は立ち上がり兄の真裏に周り…まるで甘えるかのように肩に腕を回した。

「柚佳っ!?真面目に答えっ!」
柚佳は、はぁ……と息を吐き口を兄の耳元に寄せた。
『お兄ちゃんが、美味しそうに食べていた雌豚の1人だよ…ふふ。』
「え?は?何言ってんだ柚佳?」
少し兄は、焦り始めていた。

「お…俺が食べていた?何を言っているんだ?おい、柚佳?」
柚佳は、ニヤリと笑った。

『今、私…言ったよね?雌豚の1人だと?因みに、私はお前の妹じゃない。』
と言うと、柚佳は自分の顔の皮を剥ぎ取りブチブチと音がなり…柚佳と同じ年頃の少々が顔を露にした。

『ケケケ……。』
「だ……誰だ?お、お前は?」
兄…いや、怜は震えながら聞いた。
『誰でも良いだろ?それより…聞きたいなぁ。』
その少女が、怜の耳朶をペロリと舐め生温かい吐息が頬に伝わる。

『どんな気持ち?一緒になりたい唐揚げを作ってくれる思い人と大事な妹を美味しそうに食べた感想はさニヒヒヒヒっ!』
下品な笑い声が、鼓膜を砕かれるかのように聞こえる。

「そ、そんな…俺が食べていたのは…。」
怜は、絶望し血が抜かれたかのようにダランと肩から力が抜けた。

『いやぁ~可愛かったよ?最後まで、君の名前を叫んでいたよ。少しずつさぁ、肉を削いで血を抜いていたからね⁉️あと、美味しかったよ?唐揚げ弁当!彼女の声をBGMに頂くのは最高だった。』
「桃子…桃子……。」
『それでね?唐揚げを作りたくなっちゃってね、丁寧に血抜きして作ろうとしたら?君の妹が、来たわけ?』
『いきなり鍵開けられて入られたから隠しようが無くてバレたから…手に掛けた。』
『鳥の首を掴むようにさぁ、首を締めたんたんだよ?そしたらさ、この子も君の名前をか細く言っていたよアハハハ!』
『二人の女子に、好意を持たれる君が気になってさぁ…だから君が大好きな唐揚げにしたんだ? 』
『そして…二人の調理したの実はさ風呂何だよね?血痕とか肉片とか無かったし私っ て掃除丁寧でしょ?でも、二人の血と肉片が積もっていた風呂も快適だったクフフフ?』
『私も摘まみ食いしたけど、美味しかったもんね?あの唐揚げ達!摘まみ食いは、唐揚げする上で許してねヒヒヒ。』
こちらの顔を覗くように、ニタニタと笑う少女。
「俺は……俺はぁっっ!」
我を失い狂い始めた怜。
見境無く暴れようとしたが、少女は押さえつけるわけでは無く……。
『じゃあ、そろそろ……。』
『いただきます。』
すると、ボリッと骨を噛み砕く音が聞こえてムシャボリボリと固いスナック菓子を食べる音が聞こえた。

翌朝……。
冷蔵庫に入れていた、ラップを掛けた皿をレンジにいれて温めた後に野菜を盛った皿に移す。
それは、昨日の唐揚げとは別な片栗粉で揚げたものだった。
『ふ~ん、私はこっちも好き何ですよね?』
『じゃあ、今回も…。』
近頃、行方不明事件が増えている。
原因は、不明だが最近になって現れた共通点は…。
『美味しかった~。』
何故か…食べかすが少しある皿がテーブルに残っていて。
それは、どれも唐揚げの類いであること。
『御馳走様でした。』
もしかしたら、唐揚げを作りにアナタの日常に入り混んでるかもしれない。

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エレベーター 投稿者:はらぐり

高校3年の秋。

大学への進学が決まり、卒業までの残りをどうするかを考え、アルバイトを始めた。学校終わりに職場へとすぐ向かい、夕方から夜の21時ぐらいまでの勤務。
アルバイトも慣れたころ、残業も度々頼まれることもあった。
ある日、残業で帰りが遅くなり実家のマンションへ急いで自転車を漕いだ。
帰り道の途中、団地沿いを通れば近道だが夜は電柱が少なく暗い。
いつもはそうであったが今回は違った。

1台の軽自動車と救急車、そしてパトカーが路駐に停り、人だかりもできていた。
軽自動車の運転席に青いTシャツを着た女性がぐったりしているのが見えた。
自分は何が起こっているのか一瞬で理解できた。

『練炭自殺だ』

自殺による死体は初めてで、あまりじろじろ見るようなものじゃないと、軽く手を合わせ、その場を去った。
自転車を停めるためマンションの駐輪場まで着きエレベーターのロビーまで早歩きで向かった。
外からロビー内のエレベーターは丸見えで1人の女性がエレベーター内に入って行くのが見え、自分は急いでロビーのドアを開けた。

『あっ、待ってください』
と、開ボタンを押して閉まるギリギリで自分も乗った。

『すみません、すみません』と女性に声をかけようとした。
しかし、エレベーター内には誰もいなかった。
おかしい。
確かにさっき女性がエレベーター内に入るのを見たのに。背筋がゾッとした。

それだけではない。エレベーターのボタンが押されていたのだ。
自分は押していないのに4の階のボタンが点滅している。
それは自分が住んでいる階数だった・・・

その後は何事もなかったが、記憶を辿るとエレベーターに入った女性は青い服を着ていた。
自分は霊感があるわけでは無いが、影や予知夢といったものが度々見ることがあるので、もしかしたら自殺した女性を引き連れてきてしまったのかもしれない。

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シミ 投稿者:錆金 腓噣兒

それは、私が大学時代の話です。
当時の私は怠惰な人間で、学校をサボって寮に篭もり、自分の描きたい絵ばかり描いていました。
私が入った大学は落ちぶれも落ちぶれで、生徒も少なかった為、寮もかなり空いていました。
だから、私みたいな人間が、1人部屋を手に入れることなんて造作もありませんでした。
単位なんて知ったことか、あんな所へ行ったって、つまらない絵ばかり描かされるんだ。
昼間は部屋に篭もり、キャンバスに向かう。
この瞬間ばかりが私にとって生きる希望でした。
そして、夕方くらいになると腹が減るので、近くの売店で買った飯を食い、また夜中まで絵を描く。
そして朝が来る少し前に、布団に入り眠りにつくといった生活をしておりました。
親の仕送りと、高校時代に貯めておいたバイト代が、私の生活の支えでした。
それでも、私はこの生活に多幸感を得ていました。
好きな絵を描いても怒る人が居ない。
邪魔をする同級生も居ない。
勉強をしろと口出しする家族も居ない。
この狭くて薄暗い部屋の中で、自分の時間を大好きな絵のために費やすことが出来るのが、嬉しくて仕方がない。

ただ少し、気になる点といえば…。
部屋の隅のコンクリート壁にあるシミのことだ。
この壁のシミは、私がここに来たばかりの頃には既にあった。
寮の管理人によると、それはだいぶ昔からあるらしく、いくら洗っても落ちないのだと言う。
ペンキを塗り直したりもしたが、塗ったペンキの上からまたシミが顔を出しているそうだ。
私も当時、そのシミが気味悪くて、上からポスターなどで被せたりもしたが、翌朝にはポスターにシミがくっきり浮かんでいた。
いやはやかなり頑固なシミである。
しかし、ここまで頑固となると少し興味が湧いてくる。
このシミを使って何か絵が描けないだろうか?
私は画材道具を部屋の隅に寄せて、壁のシミの前にドンと腰を落としました。
こうしてまじまじとシミを見るのは初めてだな。
シミの色は黒く、まるで禍々しい模様のように真っ白な壁を這っていた。
手のひらほどの大きさのあるそれは、まるで花のようにも見えた。
ここで一つ、この花から蔓を伸ばしてみよう。
私は、使い古しのパレットに、黒の絵の具を絞り出し、少し濡らした筆先につけた。
そして、白い壁に黒々とした線を引き始める。
サラサラと、壁は黒い線で埋め尽くされていく様は、植物が成長し、茎を伸ばす過程のようだ。
私はそれが楽しくなり、三日三晩、1週間、いや、それ以上、無我夢中で描き続けました。

私は仕上げを終え、顔を上げると、そこには壁一面に広がる黒い花が、怪しく咲き誇っていた。
嗚呼、完成した、これが私の理想の作品だ…。
数週間だろうか?数ヶ月だろうか?
長い間のめり込んでいたので、流石に身体は限界を迎えてしまった。
疲労と飢えに、身体を動かすこともままならず、壁に持たれるように倒れてしまった。
その時に気がついてしまった。
壁に塗った絵の具が全て、シミになっている。
あの花のようなシミが、まるでそのまま壁に広がったかのように。
まぁ、絵の具も壁に塗ればシミになるか…、と考えていると、シミがザワザワと、一斉に私に向かってくる。
私は得体の知れない恐怖に刈られ、壁から身体を引き離そうとするもビクともしない。
まるで、胴体から根っこが生えて、壁に縫い付けられているかのようだ。
「た、助けてくれ!」
長い間沈黙し、絵を描いていた代償だろう。
その時出た声は、まるでそよ風のように細々としたものだった。
そうしているうちにも、真っ黒なシミが大きな塊となって、私の身体に纒わり付いてくる。
私は、このままこのシミと一つになるのだろうか、それもまた悪くないかもしれない。
私は全てを覚悟し、目を閉じた。

「おい、大丈夫か!?」
劈くような男性の声で目を覚ますと、私は外にいた。
いや、正確に言えば、地面に寝ていた。
さっきまでの記憶を曖昧に辿りながら、痛む頭を抑えると、頭から血が流れていた。
どうやら私は、寮のベランダから飛び降りたらしい。
その後、すぐ救急車に運ばれたものの、この事は直ぐに問題となり、しばらく引き篭っていたことも家族にバレて退学になってしまった。
退去準備をする時に部屋に戻ったが、壁にシミはひとつもなく、私が描いた花や蔓などの、絵の具の跡すら何も無い、ただ真っ白なコンクリートの壁がそこにあった。
管理人さんに聞いても、壁には何も無かった、シミが消えて良かった、なんて呑気に喋っていた。
心霊的なものにそもそも興味が無かった私は、かつてその部屋で何があったかとは聞く気にもならなかった。

そして現在、私は画家になった。
あの時の美しいシミに取り憑かれてしまった私は、今も尚、あの真っ黒な花を描き続けている。

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ほらね。 投稿者:ななめごはん。

某ビジネスホテルに働いている知人から聞いたお話。

ある時からちょくちょく泊まりに来るようになった男性がいた。
空港関係の交通の便がいいホテルだったのでそう言う人は珍しくなかったが、
その男性はとても印象深かった。

何が印象深かったかというと、その知人は男性から何回かクレームを受けていたからだ。

最初のクレームは、
真夜中に

『自分の上の部屋の人間が飛び跳ねてうるさいので注意して欲しい』と言う物だった。

知人(以下Aさんとしておきます)は『わかりました』と応えて、その男性の泊まる上の部屋へ注意の電話を入れるべく宿泊者の確認をしようとし、傍と気がついた。
その日、上の部屋には誰も泊まっていないのである。

万が一を考え、ルームキーを持ってその部屋に行き、中を確認したがやはり誰も泊まっていない。
暫く、その部屋の中で、なにか音が聞こえるか耳を澄ましてみたが、それらしい音はしない。
廊下に出てもそれらしい気配もない。

何かの間違いだろうとフロントへ帰ってきた時、タイミングよく苦情主から電話がかかってきた。
なにも異常が無かった旨を伝えようとするが、それより早く苦情主の男が口を開く。

『音が止まらないんだけど、ちゃんと注意してくれた?』

コレにはAさんちょっと絶句してしまった。
自分が現場を確認してきた時には何の音もしていなかったのに。
どういう事だろう?
意味が解らない。
あまりの事にAさんは『あ、えーと、じゃ、今伺います』と応えて電話を切った。
音がしているとお客さんが主張される以上、とりあえず現場を確認するしか無い。
そう言う判断だった。

苦情主の部屋へ行き、ノックをして中に入る……と、案の定、部屋の中は何の音もしていなかった。

Aさんが『聞こえませんね?』と尋ねると、客の男は『今、止まったんだよ』と憤慨した態度で応えた。

『ちゃんと注意してくれた?』

と念を押すので、Aさんは仕方なく、今日は上の部屋には誰も泊まっていないし、自分が確認しに行ったが音がするような物は何も無かったと答えた。

『じゃ、あの音は何だったの?』

当然、そうあるべき、Aさんににとっては一番嫌な質問が男から返ってくる。
Aさんは、まさかお客さんを嘘つき呼ばわりするような言動をするわけにも行かず、

『解りかねます』とやんわり流してみた。

すると男は『否定はしないんだね』と言い、納得してしまったのだった。

男がなにかしらゴネ出すのではないかと思っていたAさんは、あまりにもあっさりした引き際に、ちょっとばかり拍子抜けしたらしいが、『否定はしないんだね』とはつまり、自分を嘘つき呼ばわりしなかったと言う事に感心したという意味なのだろうか?と、善意に捉え、なにより、大事にならずに済んでよかったとホッとしてフロントに戻った。

後になってよく考えると、このシチュエーションって怪談ぽくないか?
とも思ったりしたが、他の従業員に聞いても、もちろん自分も、今まで他のお客さんからそんな苦情を受けたことも、それ以降受けることも無かったので『何かの間違い』と言う事でもうそれ以上は考えないことにしていた。

暫くした別の日のこと、
例の男性がチェックインした際、妙なことを言ってきた。

『いつも同じ○階の部屋の鍵を渡されるので、たまには別の階の部屋にして欲しい』との要望だった。

その男に対して特に部屋を選んでいた訳ではなかったので、はて、そうだったかな?とは思いつつ、その日は部屋の空きが多かったこともあり、男性の要望する階の部屋の鍵を渡した。

男は自分の好きな階に泊まれると言う行為が気に入ったのか、その後2回ばかり、自分から宿泊する階数を指定してきたが、2回目の際に、或るイベントと重なってしまい、どうしても希望の階数には部屋がないと断ってからは、ホテルに気を遣ってくれたのか、またもとのように、ホテル側の指定した部屋に黙って泊まるようになった。

そんなこんなで、Aさんにとって男はすっかりなじみの客となっていた。
そんなある日。
事件は起きた。

件の男性が2泊の予定でホテルにチェックインした翌日の朝、外出の間際にAさんに言った。

『明日から使いたいので、不便だから外した鏡を付けて貰えませんか?』

『はぁ?』

Aさんは最初、男の言っている意味が分からなかった。
鏡を明日から使う?
鏡は浴室に付いてる。割れたりしていないか毎日チェックするので間違いない。
鏡を外した?
誰が?

『お泊まりになっている部屋に鏡が外してあるんですか?』

Aさんは、よく解らないままに男に尋ねた。

『違うよ、私は、何度もこのホテルを利用させてもらっているんだが、今までベッドの脇に付いていた鏡を使わせてもらっていたんだ、それが、昨日泊まって使おうとしたら無いんだ。不便なので戻して欲しいんだよ』

男はいかにもいらいらしたふうにAさんに捲し立てる。
どう考えても男の言っている事はおかしかった。

なぜなら、ホテルの部屋には最初から浴室以外には鏡が設置されていなかったからだ。

つまりベッドの脇にあった鏡など最初から存在していない。
きっと、どこかのホテルと勘違いしているんだと思い、Aさんは男にそう伝えた。
ところが、男は頑なにベッドの脇に鏡があったことを主張し、譲らない。
めんどくさいことになりそうだと思ったとき、男が『そうだ』と言ってセカンドバッグから携帯を引っ張り出し、なにやら操作し出す。

前に、部屋の中を写メしたことがあり、きっと、そこには鏡が写ってるハズだと言うのだ。
程なくして。
男は目的の画像を見つけ出したようで、何度も確認した様子の後、
Aさんに携帯の画面を突き出した。

『ほら!ここに鏡があるでしょう?』

ドヤ顔で、男に突きつけられた画像をよく見たAさんは、固まり、背筋に冷たい物が走った。
その画像には。

鏡など影も形も無かったのである。

言葉の無いAさんに、男は時間だからと言ってホテルを出て行った。
Aさんはあまりの事に恐怖したが、なんとか事を穏便に済まそうと100均で卓上の鏡を買って来て、男の部屋に自ら設置したのだった。

その後、男からは鏡のことで苦情も、勿論、お礼もなかったという。

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