玄関 投稿者:ナナシノ

子供の頃の話。
当時、両親が共働きの僕はよく一人で家にいた。
いつも通り両親の帰りを待っていたのだけど、その日は学校で嫌なことがありむしゃくしゃしていた。
両親のどちらかが帰ったくる時間になり鍵が開く音がする。
少し悪戯をしてやろうと思ったのだ。

だから扉が開くその瞬間、開く扉をぐっと自分の方へ押さえ込んだ。
外にいるであろう両親のどちらかがリアクションを想像しながら僕はほくそ笑んだ。
こういった悪戯は引き際が肝心だ。

僕は掴んだドアノブから手を離そう…
とした瞬間、ふと疑問がよぎった。

なぜ彼方から声をかけないのだろうか?
普通、開けようとしたドアが開かなければ疑問に思い声のひとつやふたつ掛けないものだろうか?
…扉の向こう側にいるのは本当に両親なのか?
そう思って固まっていると突然ドアノブが激しく動き出した。

まるで開かないことに激怒しているかのような暴れっぷりに僕はすっかり恐怖して、必死にドアを押さえ込んだ。
2~3分たった頃だろうか、暴れまくっていたドアノブがピクリとも動かなくなった。
扉を開けて外を確かめることは出来なかったがドアスコープ越しに外を確認した。
昼なのに夜のように暗く人どころか回りの景色すら見えなかった。
僕はそれ以来扉を開けるのが怖くなってしまった。
トイレのドアすら半分開けて入る始末だ。
トイレは閉めろって?無理言うなよ…

今は一人暮らし、そんな中で閉めたドアがひとりでに開いたらどうするんだ…?

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