旅館のおばさん 投稿者:ぽんぬ

僕が小学生の時のことです。

夏休みは決まって毎年家族旅行をしていました。
この時は確か母親の故郷の京都に行って舞鶴で2泊して帰りました。

料理や部屋は全然覚えてないのですが、1つ忘れられないことがあります。

その旅館は24時間貸し切りで温泉に入ることができました。
お風呂が好きなので食前食後に温泉へ入りました。
深夜になって目が覚め、なかなか寝付けなかったので温泉へ。

数十分温泉を堪能し脱衣所へ戻ろうとしたら隙間から誰か覗いてることに気づきました。
子供だったのでとても怖かったです。
なんだろう?変な人?旅館の人?と思いながらなんとか脱衣所へ戻ろうとすると、その「誰か」というのが女の人だとわかりました。
女の人ならなんとなくですが怖くないと思い声をかけた記憶があります。
そうすると女の人の顔がスゥっ…と引っ込んだので、やっと脱衣所へ。

ここで違和感を覚えました。
この温泉は貸し切りで内側から鍵をかけられる。

急いで服を着て部屋まで走り母親の布団に潜り込みました。

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超イケメンのストーカー 投稿者:Mari

私が中学二年生の一学期のとき、とある男子生徒、仮に吉沢くんが転校してきました。

 元は南小学校(仮名)に在籍していたのですが、六年生で引っ越し、また戻ってきたようです。
 私は北小学校(仮名)の出身です。北小学校の女子生徒は、吉沢くんが転校してきたことを、大いに喜びました。

 そう、吉沢くんは、仮名からもわかるかもしれませんが、今で言うと某芸能人(R.Y)のような、爽やかなイケメンだったんです。
 それに、女子生徒に対しての振る舞いもスマートで、ファンクラブが結成されそうな勢いでした。

 ところが、吉沢くんは、すぐに女子生徒のみならず、男子生徒にも嫌われることになりました。
 というのも、南小学校出身の生徒は皆、知っていたのですが、吉沢くんは、南小学校出身の女生徒、仮に鈴木さんにつきまとい……ストーカー行為をしていたんです。

 中学生は、すぐに冷やかして、安易にストーカーと人のことを言うこともあると思いますが、吉沢くんは正真正銘のストーカーでした。
 鈴木さんの登下校に勝手についていくだけでなく、鈴木さんに話しかける隙があるときは、「俺のこと好きだよね? ね?」などと鈴木さんに言い続けるなど、ハッキリ言って異常でした。

 吉沢くんが尋常ではないことがわかるエピソードとして、鈴木さんがほかの男子生徒と少しでも話していると、「うわああああああ!」などと、吉沢くんは、授業中でもお構いなしに発狂していた、というものがあります。
 ときには、鈴木さんと親しい男子生徒に殴りかかっていくこともありました。たいてい、返り討ちにされていましたが。

 こんな調子ですから、吉沢くんは、すっかり嫌われ者の位置に定着しました。
 南小学校の人たちは、なんの違和感もなかったようです。でも、私を含めた北小学校出身の、とくに女生徒にとってはショックなものがありました。
 なにせ、吉沢くんは、見た目はとんでもないイケメンなんですから。「残念なイケメン」どころの話ではないですよね。

 ところで、当のストーカー被害を受けている鈴木さんはどうだったのかというと、当然のことかもしれませんが、吉沢くんのことをとても嫌がっていました。
 いくらイケメンとはいえ、ストーカー行為をしてくるし、そのせいでまともにほかの男子生徒とも話せないのでは、吉沢くんのことを好きになりようがないですよね。

 結局、卒業するまでのあいだ、吉沢くんの鈴木さんに対するストーカー行為はずっと続きました。
 でも、不幸中の幸いで、高校は離れたようです。鈴木さんは、頭がよかったですからね。吉沢くんは、ストーカー行為に熱を上げすぎていて、成績は悪かったようですから。

 今、私たちはアラサーになりましたが、なんと……吉沢くんの鈴木さんに対する想いは、まだ変わっていないんです。
 さすがに年齢が年齢なので、今、ストーカー行為を実行したら逮捕されるでしょうから、何も行動は起こしていないそうです。
 ただ、鈴木さんの家の近くを意味もなくうろついてしまう、とは言っていました。……立派なストーカーですね。

 ところが最近、鈴木さんが結婚することになりました。
 そのことを知ったときの吉沢くんの発狂ぷりといったら、もう言葉には表せないぐらいでしたよ。
 鈴木さんは、結婚を機に、遠くに引っ越すそうです。これで、吉沢くんも、いい加減鈴木さんのことを諦めてくれるといいのですが……。

 えっ、ところでなんで、お前はそんなに二人のことに詳しいのかって? それは私が、吉沢くんのストーカーだからですよ。

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てんてけてん(実話) 投稿者:茶輪

私が小学生だった頃、とある日の休み時間にクラスメイトの男子二人が教室の隅で会話をしているところを目撃した。

クラスの男子A「B、昼休みになったら屋上で一緒に『てんてけてん』しよう!」
クラスの男子B「うん、いいよー」
何気ない会話だったにも関わらず、私は「てんてけてん」が一体何なのか気になった。

その後、タイミングを見計らってAを呼び出して「てんてけてん」について聞いてみた。
しかし、彼は「『てんてけてん』は『てんてけてん』だよ〜」等、はぐらかすだけで私に何も教えてくれなかった。
それはBに聞いても同じだった。

昼休みになり、私は「てんてけてん」が何か気になったので屋上に向かおうとも思った。
しかし、それだけのためにわざわざ屋上まで足を運ぶのもバカバカしいという気持ちと、屋上で男子が二人きりの秘密の約束を交わしていたようにも見えたので邪魔しては悪いという気持ちがあったため、結局はそのまま教室で読書をして過ごすことにした。

あれから10年以上経った今でも頭の片隅に「てんてけてん」の記憶が残っており、それが一体何なのか未だに分からない。
恐らく、本人たちに聞いても覚えてなかったりで答えられないだろう。
こうして「てんてけてん」は永遠に解けない謎の一つとなった。

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玄関 投稿者:ナナシノ

子供の頃の話。
当時、両親が共働きの僕はよく一人で家にいた。
いつも通り両親の帰りを待っていたのだけど、その日は学校で嫌なことがありむしゃくしゃしていた。
両親のどちらかが帰ったくる時間になり鍵が開く音がする。
少し悪戯をしてやろうと思ったのだ。

だから扉が開くその瞬間、開く扉をぐっと自分の方へ押さえ込んだ。
外にいるであろう両親のどちらかがリアクションを想像しながら僕はほくそ笑んだ。
こういった悪戯は引き際が肝心だ。

僕は掴んだドアノブから手を離そう…
とした瞬間、ふと疑問がよぎった。

なぜ彼方から声をかけないのだろうか?
普通、開けようとしたドアが開かなければ疑問に思い声のひとつやふたつ掛けないものだろうか?
…扉の向こう側にいるのは本当に両親なのか?
そう思って固まっていると突然ドアノブが激しく動き出した。

まるで開かないことに激怒しているかのような暴れっぷりに僕はすっかり恐怖して、必死にドアを押さえ込んだ。
2~3分たった頃だろうか、暴れまくっていたドアノブがピクリとも動かなくなった。
扉を開けて外を確かめることは出来なかったがドアスコープ越しに外を確認した。
昼なのに夜のように暗く人どころか回りの景色すら見えなかった。
僕はそれ以来扉を開けるのが怖くなってしまった。
トイレのドアすら半分開けて入る始末だ。
トイレは閉めろって?無理言うなよ…

今は一人暮らし、そんな中で閉めたドアがひとりでに開いたらどうするんだ…?

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親友のお別れ 投稿者:東京のカレー屋P

20年近く昔の出来事ですがあまりにも衝撃的だったため、今でも鮮明に覚えています。

自分はゲームが好きで、毎日のように友人(以下A)と時間を忘れてゲームで遊んでいました。
そんな友人がある日、実家のある東北へと帰ってしまう事がありました。当時は今のようにネットワークゲームも進んでおらず、遊べる機会が少なくなるなと悲しみながらも東京に来た時はまた遊ぼうぜとAを送り出しました。

そんなある日、友人の彼女から一本の電話がありました。内容は

“”Aと連絡が取れなくなった、行き先を知らないか””

という内容、家族や彼女にも連絡せずに音信不通、つまりは失踪である。
当然自分も初耳でかなり驚きました。Aは明るく器用でしっかりしており何の連絡もせずに失踪するなどまったく思えない人物だったからです。
その場はとりあえず””何かわかったらすぐ連絡する””と伝え電話を切りましたがなにぶん見当がまったくつかず自分ではお手上げの状態でただただ無事を祈る事しか出来なかったです。

それから数日後、休日ゆえ自宅のソファーで昼寝をしていた時に夢を見ました。
夢の中で自分は地下鉄のホームのようなところで電車を待っていました。ちょうど階段を降りて折り返した付近、黄色い線と階段の壁との狭いスペースにもたれかかるようにして電車を待っていると、背後の階段から人が1人降りてきました、Aです。
ホームに降りてきたAはいつもゲームセンターで会う時のような普通の様子で『おーー!』と挨拶をしてきました。
俺も挨拶を返しながら『オイオイおまえ何してたんや、なんか皆んなめっちゃ心配しとったぞ?』と言うとAは少し恥ずかし笑いをするような感じで『….、ごっめんごめん(笑)』と謝ってきました。まあ無事だったのならと安心したのかそれ以上は追及せず『ちゃんと連絡しときーや。あとまた東京来た時は飲みにでもいこーや』と、いつもの感じで会話をしていると電車がホームにやってき、扉が開きAはその電車に乗り込み去って行きました。

そこで目が覚めました。そしてそれから20分も経たずして一本の電話が。
内容はAの彼女からでAが東北の山中にて車の中で遺体で見つかったとの報告。自殺でした。
その報告を受け、自分は先ほど見た夢を思い出し不思議な感覚に陥りました。

電話で先程の夢を話すと相手も偶然にしてはタイミングが良すぎるねとお互い驚きを隠しきれませんでした。

色々な想いが頭をよぎりました。
夢を見たすぐ直後に遺体が発見された事、自分が先にホームで待っていたのになぜ自分はAを””見送った””のか?
地下鉄タイプの電車は各駅停車のみなので普通に考えると自分も一緒にその電車に乗るはず、ホーム中央なら反対側という考えも出来るが自分がいたのは明らかに片側の電車にしか乗れないような乗車位置なのに。

もしかしたらあの電車は死者を運ぶ乗り物で生者は乗る事が出来ないものだったのかもしれません。
もしあの電車に自分も乗っていたらどうなっていたのか想像も付きません。
彼のしっかり者の性格ゆえ、律儀にも最後のお別れを言いにやってきたのかな?ごめんと謝った時に僅かにあった無言の””間””が何だったのか?

わからないことだらけですが今でも一つだけ言える事があります。

もう一度Aと一緒に遊びたい、何があっても生きていて欲しかった。
でももう叶わない、過去は変えられないから彼とゲームで遊ぶことはもう出来ない。

だが未来は作れる、だから俺はお前の分も頑張って最後まで生きてみせてあっちに行く時はその時の最新ゲームを持っていくからまた遊ぼうな、Aのゲームの腕が最新ゲームについていけずに俺の無双になっちまうのをあの世で震えて待つがいい。

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「訳ありのアパート」 投稿者:マシンガンジョー

「このアパートちょっとあまりおすすめしません」

安い物件を探していた早織さんには丁度良かった。
すぐに契約をして、住みはじめたという。

地元から上京してきてまだ何も知らなかったんですよね。
でも、住みはじめてしばらくしてからは、何もない。

ただ2ヶ月、3ヶ月を過ぎると
気づいたのだが、三階建てのアパートの三階には自分しか住居者がいないことに気づいた。
他の部屋は空いている。

ただし、いつの間にか家族が越してきたのか廊下で誰かとすれ違うことが頻繁にあった。
一人じゃない。そんな安心感に包まれていると、
やがていつの間にか引っ越してしまったのか、
三階にはまた再び自分だけしか住居者がいなくなった。

伽藍とした廊下に、上履きがひとつ落ちている。
拾うと、一階のベランダから馴染みのおばさんが顔を出して、
「おはよう」
と、元気に挨拶をしてくれた。

丁度良いので、三階の住人はいつ越したのかを聞いた。
すると、怪訝そうな顔で、
「三階にはここ半年くらい誰も越してきてないよ」 
そう言われてしまった。

だが、早織さんは半年の間、
何人もの人々の姿を三階で目撃している。

不動産屋に言うと、
「黙っててよもう少し値を下げるから」と交渉されたが、
引っ越しを決意していたので、部屋の鍵を返し故郷に帰った。

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ありえない旅行の記憶と写真 投稿者:Mari

これはO県に住む、父方の祖父から聞いた話です。祖父母は本当に仲がよくて、祖母は一昨年、体調を崩してしまい、入院していたのですが、祖父は毎日お見舞いに行っていたそうです。

「懐かしいわね、この写真」
 ある日、そう言って祖母が祖父に見せてきたのは、昔、広島の尾道に旅行した際の写真でした。

「ホテルの大きな看板が、車内から見えたときは大興奮したわよね」
「お前、はしゃいでたもんなあ」
「あら、あなただって」
 祖父母は笑い合いました。

「露天風呂がまたすごかったのよね。絶景ってああいうところのことを言うんだと思うわ」

 ところが、そう笑顔で言ったあとに、祖母はとても寂しそうな顔になったそうです。
「でももう、私は隣の県だとしても、旅行できそうにもないわね……」
「そんなことを言うなよ。元気になったら、快気祝いでまた尾道に行こう。それで、あのホテル……名前はなんだったか、あそこに泊まればいいじゃないか」
 祖父は力強く祖母を元気付けましたが、祖母は、祖父の言葉に目を見張りました。
「あなた、知らないの?」
「何がだよ」
「あのホテルは、もう2003年には閉館したらしいのよ。廃墟になって、心霊スポットになってしまったって言われているの」
 祖母は、心底悲しそうだったそうです。

「ごめんな。じゃあ、違う場所に行こう」
 それは悪いことを言ってしまったと思った祖父は、祖母をそう慰めましたが、だんだん奇妙な気分になってきたのだとか。
 妻とあのホテル――名前はTだったはずだ――に行ったのは、確か、昔といってもまだ十年ぐらい前の話じゃなかっただろうか……? と。
 もう一度、祖父が旅行の際の写真を見てみると、祖父母はどちらも笑顔で写っていますが、景色は寂れていて、Tの中で撮影した写真はなかったそうです。

 けれど、祖父も祖母も、Tに泊まった記憶が確かにあるという話になり、二人で顔を見合わせ、そして、またあることに気が付きました。
 旅行の際の写真に、祖父母はどちらも写っているけれど、撮影したのは誰なのか、と。
 祖父母はタイマーで写真撮影なんてできませんし、通りがかかった人に写真を撮ってもらうタイプでもありません。
 昨年の祖母の葬儀で祖父に聞いた話なのですが、祖母がもうこの世にいない以上、わかることは何もないと思います。

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壁の先 投稿者:ふじおか

これは私が大学生の時、実際に体験したお話です。

大学に入学したばかりの私は、広い大学に慣れるためよく構内を散歩していました。そんなある日、いつもと同じように散歩をしていると奇妙な人物が木陰からこちらを見ていることに気がつきます。

その人物は男性で、なんと全裸なのです。

しかし男性はとても無機質な目をしており、生気を感じられませんでした。それを見た私は「あ、この人生きてる人じゃないかも」すぐにそう思いました。なぜなら、まわりの学生は誰も男性の存在に気づかないのです。

そんな男性の様子を見つめているとやがて手招きをしてきました。
男性は手招きをすぐにやめると構内の奥へと消えていきます。

好奇心から私は男性についていくことにしました。

男性の背中を追っていくと、やがて人気のない「大きな壁」のある場所に辿り着きます。気がつくと男性の姿はすっかり見失ってしまっていました。

ただ、直感で「あの人はこの壁の先にいる」そう思いました。

ここからはよく覚えておらず、どうやったのかも分からないのですが私は何故かその「大きな壁」を乗り越えることができたのです。

壁の先にあったもの・・・
それは「白骨遺体」でした。

遺体は衣服を身につけておらず、近くには古いビジネスカバンが1つだけありました。

そこで私はようやく恐怖を感じました。

助けを呼ばなくちゃ。そう思った私は携帯で警察に通報。ここからすぐに離れたいと思いましたが、あの大きな壁を再び乗り越えることはできなくなっていたのです。

しばらく白骨遺体とともにその不気味な場所で待っていると警察官が駆けつけ、脚立を使って壁の先から助け出してくれました。駆けつけてくれた警察官からもどうやってこの場所に入ったのか?と聞かれましたが、「分からない」としか答えられませんでした。

後日、あの白骨遺体は捜索願の出されている行方不明者であることが判明しました。しかし、なぜ衣服を着ていなかったのか?なぜあの場所で亡くなり、白骨化するまで誰にも気づかれなかった?それは今でも分かりません。

あの日、私に手招きをしていた男性は自分の体を見つけてほしくて、私に手招きをしてきたのかもしれません。今はそう思うことにしています。

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聞く耳持たず 投稿者:Mr. BB

何も聞こえない。話し声も、足音も、呼吸も、何も聞こえない。当然でしょう。ここに来てから一週間ぐらい、生きている人を見ていないのだから。
 肝試しのような感覚でやってきたこの場所は、血肉にまみれ腐臭漂う廃校。

 ふと視線を感じたが、その視線を辿ってみるとそこにあるのは嫌気さを微塵も感じないはずの、生気を失った眼球だ。とはいえども、その黒い眼差しから発せられる不気味さからはいち早く逃げだしたい衝動にかられ、すぐに目線を外すが、そこにも生気のない眼が、そこにも、そこにも、そこにも。見回せば無数の黒い眼差しに囲まれていた。

 独りでに逃げようとする私の腰をぐっと抑えて、目を閉じて、深呼吸。大丈夫、何も聞こえない。からかいの声も、蔑みの声も、何も聞こえない。私に対する非難の声は何も聞こえない。普段常に感じる、嘗め回されるような視線も、声も何も感じない。落ち着いてきたのか、挙動不審に暴れていたはずの心臓の音も聞こえなくなっている。目を開ける。私への不快な視線なんてなかったのだ。
 急に訪れた静けさにも、かえって気味の悪さを感じてしまった私は、この場を離れようと歩き出した。

 しばらくして、足音のようなものが廊下を反響して聞こえてきた。その足音に妙に懐かしさを覚えたので、知り合いが私を探しに来たのだろうか。
余計なお世話だと思い、この場を急いで逃がれようとすると、それまで歩くような速さだった足音が、走るような速さで、それもどんどん遠ざかっていくような感じがした。
立ち止まって振り返っても誰もいないし、足音も聞こえない。
気配のする場所に、そっとそっと近づいて、曲がり角を覗くと、少し離れた先に人形を抱えた女の子がいた。

 私と目が合ったその女の子は、目を逸らし、私を背に廊下の奥へスキップしていった。タンタタンタタン、タンタタンタタン。
女の子が離れていっても、ずっと同じ調子で鳴り響くステップの音。私は思わずあの子を追いかけた。タッタッタッタッタ、タッタッタッタッタと、追いかけられるような音がどんどん頭に響いてくる。
私も誰かに追いかけられているような感覚に襲われるが、構わず彼女を追い続ける。

 彼女に追いつくと、大きくなっていった足音も止んだ。女の子は振り向いて、人形の耳元に囁いた。
「不審者に付いてったらダメって学校で言われなかった? 聞く耳持たずだね。あ、お姉ちゃんに耳なんて付いてなかったね」
 ふっと人形に息を吹き付けられると、むず痒さを感じた。人形に注目する間もなく視界が奪われる。
「今度は、目をもらうね」

 目の前には、耳が切り取られ、目をくり抜かれた私の、腰を抜かしているのが見えた。

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生き霊を飛ばしてた話。 投稿者:颯

自分に起きた話。
怖くなかったらごめん。

数年前自分は鬱で仕事を辞めて…ってか辞めさせられて地元に戻ってた。
鬱の理由は先輩女性社員からのいじめ。
会社の上司も面倒事は勘弁って感じで自分に自主退職するように勧めてきてさ、自分も肉体的にも精神的におかしくなってるから死にそうになりながら辞表だして田舎に帰った。
地元ってすっごい田舎で見渡す限り田んぼor山みたいな感じの田舎で娯楽なんてほぼ無くて仕方がないから月2の通院以外ずっと引きこもってた。体力も精神力もスッカラカンな状態だったからね。
その引きこもり期間中ずーっと部屋で布団包まって限界まで起きて気を失った様に寝るってのを繰り返してた。
んで、気を失ってる間夢を見てた。
自分って基本的に夢を忘れるタイプなんだけどこの時期の夢の記憶は今でもしっかり残ってる。
自分はベビーベッドとかある部屋に突っ立ってて手には出刃包丁を持ってる。
んで、何故か笑いながら見知らぬ男女の幼児を滅多刺しにしてるって内容。
1番最初この夢を見た時、
「あー自分はここまで狂ったんだ…」
ってショック受けたよ。
母さん父さん兄ちゃんに頭の中で土下座したよ。こんな狂った奴が家族でごめんって。

そんな生活を半年位続けてたんだが、処方された薬と相性が良かったのか全快とはいかないが、短時間のバイトを週4位入れるようになってた。でも、刺殺す夢は相変わらず見てた。
その頃急に前職の上司が実家に電話してきた。
最初は父さんがブチ切れてガチャ切りしてたらしい。(兄さんと母さんから後から聞いた)
最終的には実家前まで元上司はやってきた。
母さんが帰るよう言っても元上司自分さんに会うまで帰れないを連呼。
そうこうしてる間に自分バイト先から帰宅→元上司を見る。元上司笑顔で駆け寄る→自分過呼吸→気絶→救急車で病院へGO!だったので元上司と話せなかった。
こっから先は対応した兄さんと父さんの話。
凄く完結に言うと自分をいじめた先輩社員、自分の生き霊に追い詰められて精神病んで自分の子2人道連れに一家心中未遂起こして、
次は自分だと思った元上司怖くなって謝りにきたと…。
自分が仕事を辞めて1月位経った頃から自分が夢に毎日出てきて子供達を滅多刺しにして「先輩がやらないからやっときましたー」とゲラゲラ笑ってたそうで。
それだけに留まらず、
・現実でも自分が先輩の前に現れ、許されないを連呼しながら後をついて来る。
・先輩の子供達が自分の生き霊を視認。
何故か友達になって母親である先輩の悪口を吹き込む。(内容は自分にやったいじめの詳細)そのせいで子供達先輩を嫌う。
・先輩旦那に浮気がバレされる。
(非通知の番号から奥さんが浮気してますよって言われて旦那さん調べてバレたそう)etc…。
元上司の話を聞いて兄さんと父さん大激怒で次来たら警察を呼ぶと怒鳴って追い返したそうです。
帰宅後その話を聞いて頭を抱えました。
自分が滅多刺しにする夢を見始めた時期と先輩が夢を見始めた時期がぴったりと重なると…orz

その後は元上司の突撃もなく、滅多刺しにする夢も見ずに穏やかに生きております。
元上司と先輩社員のその後は残念ながらわからず…。辞めた理由が理由なので当時の同期とのつながりも無かったもので…。
当時正直生き霊なんか出しとらんわ!!っと憤慨してましたが最近生き霊って出してる人もかなり消耗すると知ってもしかしたら本当に生き霊を出してたのかな…?

あんまり怖くなくて本当に申し訳ない。
でも当時の自分は凄く怖かった。
本当に自分が狂ったと思って。

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